アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎の診断
当院や他の先生の診察の際にいきなりお子さんが「アトピー性皮膚炎」と言われて戸惑った経験のある親御さんは多いのではないかと思います。
では医師がアトピー性皮膚炎と診断する目安、基準はどうなっているのでしょうか。当院においては主にUKWP(The U.K. Working Party)の診断基準=目安に沿ってお子さんのアトピー性皮膚炎を診断しています。
UKWPの診断基準
大基準(1)と3項目以上の小基準(2)を満たすものをアトピー性皮膚炎と診断します。
大基準(1)
お子さんは皮膚がかゆい状態である。
または、両親から子どもが皮膚を引っかいたり、こすったりしているという報告がある。
小基準(2)
- お子さんはこれまでに肘の内側、膝の裏、足首の前、首のまわり(9歳以下は頬を含む)のどこかに皮膚のかゆい状態がでたことがある。
- お子さんは喘息や花粉症の既往がある。または、一等親以内に喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性結膜炎、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患の既往がある。
- 過去12か月の間に全身の皮膚乾燥の既往がある。
- 関節の内側の湿疹(3歳以下は頬・おでこ・四肢外側を含む)が確認できる。
- 1歳以下で発症している(3歳以下のお子さんにはこの基準を使わない)。
※ このUKWP診断基準は『小児のためのアトピー性皮膚炎の予防と治療の手引き~小児アトピー性皮膚炎治療・管理ガイドライン(PADGL)2024~』にも記載されています。
アトピー性皮膚炎を治療する目的
お子さんのアトピー性皮膚炎の治療には2つの目的、治療目標があります。

まず、アトピー性皮膚炎自体の治療目標です。
アトピー性皮膚炎治療の最終目標は、症状がないか、あってもとても軽く、日常生活に支障がなく、塗り薬や飲み薬(薬物療法)もあまり必要としない状態に到達し、それを維持することです。
また、このレベルに到達しない場合でも、症状が軽度で、日常生活に支障をきたすような急な悪化がおこらない状態を保つことが目標となります。

そして、お子さんにとってもう一つ大事な目的、治療目標があります。
それは、「お子さんの食物アレルギーを予防すること」です。 世界におけるこれまでの研究結果から食物アレルギーを起こす最大の原因(リスク因子)はアトピー性皮膚炎であることが分かってきています。(興味のある方は「二重抗原曝露理論」で調べてみてください)
当院では以前から食物アレルギーにより生活に支障が生じて困っている、時には命に関わりかねないひどい症状を起こした方を多数診察しており、食物アレルギーの方の苦労する姿をいままでにたくさん見ています。
大事なお子さんや親御さんが将来、お子さんのアトピー性皮膚炎だけでなく食物アレルギーで余計な苦労をしないようにするため、特に赤ちゃんの肌荒れ、乳児アトピー性皮膚炎に対して当院は積極的に、徹底的に治療する方針としています。
上記の通りお子さんのため、そして親御さんのためにアトピー性皮膚炎はしっかり治療しなければならない病気です。
そしてこの数年でアトピー性皮膚炎の治療は急激に進歩して、ほとんどの方のアトピー性皮膚炎はしっかり治療すれば症状がおさまるようになりました。
よって当院ではアトピー性皮膚炎の診断についてはお茶を濁さずごまかさず、はっきり診断名をお伝えするようにしています。
ただしたまにですがアトピー性皮膚炎かどうか非常に悩ましい場合もありますので、その場合は正直に親御さんにお伝えしたり皮膚科の先生の受診をお勧めするようにしています。
アトピー性皮膚炎の治療

お子さんにアトピー性皮膚炎があり肌荒れが残っていると、本人も痒みで夜に眠れなかったり、親御さんも一緒に眠れなくなるなど、生活に支障が出てしまいます。
アトピー性皮膚炎の適切な治療をして肌をつるつるにすると、本人も親御さんも生活が楽になります。
アトピー性皮膚炎の治療で大切なのは、「スキンケア」と「適切な塗り薬の使い方」です。
毎日の正しいスキンケアで、お肌のバリア機能を高めます。ただ、意外と「正しいスキンケア」「適切な塗り薬の使い方」ができていないのが、現状です。
十日市場こどもクリニックでは、身体の正しい洗い方、拭き方、お薬の上手な塗り方などを、きちんとお伝えします。
お薬の上手な塗り方について、当院ではだいたいこのような説明をしています。

間違ったステロイドの使い方にご注意ください
ステロイドも使用することがありますが、使い方を間違わなければ、効果的な薬です。
例えばですが、次のようなステロイドの使い方をされる方がよくいらっしゃいます。
(※このようなステロイドの使い方をリアクティブ療法といいます)
- 一度ステロイドを使って赤く荒れていた肌が良くなった
- (副作用が怖くて)すぐステロイドを塗るのを止める
- しばらくしたらまた肌が荒れてきてステロイドを塗る
- 良くなったらまたすぐステロイドを塗るのを止める→繰り返し
症状がとても軽い方は余り問題にならないのですが、ある程度以上症状の重い、アトピー性皮膚炎の症状が続いている方が上記のようなステロイドの使い方(リアクティブ療法)をするといつまで経ってもアトピー性皮膚炎が治らずお子さんも親御さんも困り、結果的にステロイドを塗る量も増えてしまうというデータが既に出ております。


アトピー性皮膚炎の治療で大切な2つのポイント
- まず皮膚をつるつるにする(初期療法、寛解療法)
- 落ち着いたらお肌の状況を確認しながら徐々に減らして問題ないところまでステロイドなどの薬を減らし、皮膚をきれいな状態に保つ(維持療法、プロアクティブ療法)
※当院では最新のガイドラインである「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2024」「小児のためのアトピー性皮膚炎の予防と治療の手引き ~小児アトピー性皮膚炎治療・管理ガイドライン2024~」に基づいた治療を行っています。

なかなか肌荒れが良くならない方は以下の3項目を確認してみてください
お子さんの肌荒れで困っている方のチェックリスト
1. お子さんの肌荒れ用の塗り薬(ステロイド、保湿剤)は1日2回塗っていますか?
得てして朝に塗り薬をちゃんと塗れていない方が多いです。
朝は何かと忙しいのは重々承知していますが、どんなに強い薬を使っても1日1回塗るだけでは収まり切れない方も相当数いらっしゃいます。
2. 塗り薬はたっぷり塗っていますか?
ステロイドであろうと保湿剤であっても「ティッシュが張り付くくらいべったり塗る」が基本です。
薬が足りないという方は主治医に是非おっしゃって下さい。
地域により状況が違うのですが、幸い神奈川県では相当量の塗り薬の処方を保険診療として許して頂いていますので、殆どの患者さんに対して十分な量の処方が出来ます。
3. (小学校以上のお子さん)親御さんはお子さんの薬の状況を把握していますか?お子さんに任せっきりになっていませんか?
小学生の場合親御さんの監督は必須です。本人任せだと「例外なく」塗る量や回数が減ってきます。
中学生以上であれば徐々に本人に薬の管理や使用を任せていくべきだと思いますが、親御さんが遠目から状況を見守ってあげて、必要であれば声をかけてあげた方が良いです。 (見守る方が色々大変ですが)
お肌がさほど弱くない方は、上記3つを完全に守らなくても十分に良くなることもあります。
また、上記3つを守ってもお肌が元々非常に弱いためある程度強い薬を使わないと抑えきれない方も確かにいらっしゃいます。
ただ、薬を塗ってもなかなか治らないという方はまず上記3項目を是非見直してみて下さい。
ところでアトピー性皮膚炎の治療薬はこの数年でかなり変わってきました。
強いステロイドほどではありませんがそこそこ効果がありステロイドほど副作用を気にせず使える治療薬(モイゼルト、コレクチム)が小児でも使えるようになりました。
その結果、アトピー性皮膚炎があっても症状が強くない方に対してはステロイドを使わず治療できることが増えてきました。
一方、半年以上強いステロイド外用薬などで十分な治療を行ってもどうしても改善しない重症なアトピー性皮膚炎患者さんに注射薬や内服薬が使えるようになりました。
当院でも6ヶ月児から使用可能な自己注射薬であるデュピクセントは既に数名の方に使用しております。
アレルギーでお困りの方はお気軽にご相談ください
以上は原則的な話ですが、当院では上記説明に加えて実際に患者さんを診察し親御さんと相談しながら細かい薬の調整を行っています。
どの薬をどのくらいの量、どれだけの期間塗って、どうなったら、次はどうしたらよいか…丁寧にお伝えしますので、ご安心ください。
更に、お子さんによっては飲み薬も一緒に使用してかゆみを抑えるようにします。
当院ではスキンケアや治療を行うだけでなく食物アレルギーの有無や、離乳食の進め方も相談できます。
また、当院ではかかりつけの患者さんを対象に、時折オンラインスキンケア教室を開催しております。












