アレルギー疾患と治療
アトピー性皮膚炎の治療
お子さんにアトピー性皮膚炎があり肌荒れが残っていると、本人も痒みで夜に眠れなかったり、親御さんも一緒に眠れなくなるなど、生活に支障が出てしまいます。
アトピー性皮膚炎の適切な治療をして肌をつるつるにすると、本人も親御さんも生活が楽になります。
アトピー性皮膚炎の治療で大切なのは、「スキンケア」と「適切な塗り薬の使い方」です。
毎日の正しいスキンケアで、お肌のバリア機能を高めます。ただ、意外と「正しいスキンケア」「適切な塗り薬の使い方」ができていないのが、現状です。
十日市場こどもクリニックでは、身体の正しい洗い方、拭き方、お薬の上手な塗り方などを、きちんとお伝えします。
お薬の上手な塗り方について、当院ではだいたいこのような説明をしています。
間違ったステロイドの使い方にご注意ください
ステロイドも使用することがありますが、使い方を間違わなければ、効果的な薬です。
例えばですが、次のようなステロイドの使い方をされる方がよくいらっしゃいます。
(※このようなステロイドの使い方をリアクティブ療法といいます)
- 一度ステロイドを使って赤く荒れていた肌が良くなった
- (副作用が怖くて)すぐステロイドを塗るのを止める
- しばらくしたらまた肌が荒れてきてステロイドを塗る
- 良くなったらまたすぐステロイドを塗るのを止める→繰り返し
症状がとても軽い方は余り問題にならないのですが、ある程度以上症状の重い、アトピー性皮膚炎の症状が続いている方が上記のようなステロイドの使い方(リアクティブ療法)をするといつまで経ってもアトピー性皮膚炎が治らずお子さんも親御さんも困り、結果的にステロイドを塗る量も増えてしまうというデータが既に出ております。

アトピー性皮膚炎の治療で大切な2つのポイント
- まず皮膚をつるつるにする(初期療法、寛解療法)
- 落ち着いたらお肌の状況を確認しながら徐々に減らして問題ないところまでステロイドなどの薬を減らし、皮膚をきれいな状態に保つ(維持療法、プロアクティブ療法)
※当院では最新のガイドラインである「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2024」「小児のためのアトピー性皮膚炎の予防と治療の手引き ~小児アトピー性皮膚炎治療・管理ガイドライン2024~」に基づいた治療を行っています。

なかなか肌荒れが良くならない方は以下の3項目を確認してみてください
お子さんの肌荒れで困っている方のチェックリスト
1. お子さんの肌荒れ用の塗り薬(ステロイド、保湿剤)は1日2回塗っていますか?
得てして朝に塗り薬をちゃんと塗れていない方が多いです。
朝は何かと忙しいのは重々承知していますが、どんなに強い薬を使っても1日1回塗るだけでは収まり切れない方も相当数いらっしゃいます。
2. 塗り薬はたっぷり塗っていますか?
ステロイドであろうと保湿剤であっても「ティッシュが張り付くくらいべったり塗る」が基本です。
薬が足りないという方は主治医に是非おっしゃって下さい。
地域により状況が違うのですが、幸い神奈川県では相当量の塗り薬の処方を保険診療として許して頂いていますので、殆どの患者さんに対して十分な量の処方が出来ます。
3. (小学校以上のお子さん)親御さんはお子さんの薬の状況を把握していますか?お子さんに任せっきりになっていませんか?
小学生の場合親御さんの監督は必須です。本人任せだと「例外なく」塗る量や回数が減ってきます。
中学生以上であれば徐々に本人に薬の管理や使用を任せていくべきだと思いますが、親御さんが遠目から状況を見守ってあげて、必要であれば声をかけてあげた方が良いです。 (見守る方が色々大変ですが)
お肌がさほど弱くない方は、上記3つを完全に守らなくても十分に良くなることもあります。
また、上記3つを守ってもお肌が元々非常に弱いためある程度強い薬を使わないと抑えきれない方も確かにいらっしゃいます。
ただ、薬を塗ってもなかなか治らないという方はまず上記3項目を是非見直してみて下さい。
ところでアトピー性皮膚炎の治療薬はこの数年でかなり変わってきました。
強いステロイドほどではありませんがそこそこ効果がありステロイドほど副作用を気にせず使える治療薬(モイゼルト、コレクチム)が小児でも使えるようになりました。
その結果、アトピー性皮膚炎があっても症状が強くない方に対してはステロイドを使わず治療できることが増えてきました。
一方、半年以上強いステロイド外用薬などで十分な治療を行ってもどうしても改善しない重症なアトピー性皮膚炎患者さんに注射薬や内服薬が使えるようになりました。
当院でも6ヶ月児から使用可能な自己注射薬であるデュピクセントは既に数名の方に使用しております。
アレルギーでお困りの方はお気軽にご相談ください
以上は原則的な話ですが、当院では上記説明に加えて実際に患者さんを診察し親御さんと相談しながら細かい薬の調整を行っています。
どの薬をどのくらいの量、どれだけの期間塗って、どうなったら、次はどうしたらよいか…丁寧にお伝えしますので、ご安心ください。
更に、お子さんによっては飲み薬も一緒に使用してかゆみを抑えるようにします。
当院ではスキンケアや治療を行うだけでなく食物アレルギーの有無や、離乳食の進め方も相談できます。
また、当院ではかかりつけの患者さんを対象に、時折オンラインスキンケア教室を開催しております。
食物アレルギー:必要最小限の除去
食物アレルギーとは、食べる物が原因で、じんましん、呼吸困難、腹痛などが出る病気です。
まれに、アナフィラキシーといって重い症状を起こすこともあります。
正確な原因食品の診断に基づいて、「必要最小限の除去」つまり「食べられる程度を見極めて少しでも食べておく」のが基本です。
原因食品の診断のために、アレルギー血液検査や皮膚プリックテストだけではなく、院内にて日帰りで行う「経口食物負荷試験」も行っています。
血液検査は、あくまでも数字を見るだけです。数値が低くても食べた時に危険なアナフィラキシーショックを起こすことがありますし、逆に、数値が非常に高くても全く問題なく食べられることもあります。
血液検査の値がどうあれ、食べたときに実際に反応があれば、食物アレルギーです。
でも、食物アレルギーの症状と一口で言っても口のまわりが少し赤くなるだけのこともあるし、ぐったり・ゼーゼーで命の危険にさらされる場合もあります。
どの食品をどれだけ除去するのか、それをいつまで続けるのかはとても難しいですよね。
生でたくさん食べると症状が出るけども、少し混ざって火が通っている食べ物であれば食べても問題ない方もいらっしゃいます。「必要最小限の除去」、「食べられる程度を見極める」は当院の得意とするところです。
この数年で増えてきたのは他の病院で「少しずつ食べていいですよ」と言われたものの具体的にどの程度、どの位の間隔で食べたら良いか教えてもらえず途方に暮れて当院を受診される患者さんです。
当院を受診された患者さんに対しては今までの状況を詳しくお伺いし、必要であれば皮膚検査や血液検査を行いその結果と最新の情報、20年以上食物アレルギー患者さんを診療してきた経験を全て踏まえてどの食べ物をどの位の量なら食べて良いのか、具体的な対応についてお話ししております。
十日市場こどもクリニックでは、血液検査だけで除去の判断をするのではなく、外来での「食物経口負荷試験」などを併用しながら、どこまで何を食べられるのか、きちんと指導していきます。自己判断せずに、ぜひお気軽にご相談ください。
経口食物負荷試験
食物アレルギーの患者さんが、何をどのくらい食べるとどんな症状が出るかというのは、食物アレルギーに十分慣れている医師がちゃんとお話しをお伺いして、必要であれば血液検査や皮膚検査をすればある程度の予想は出来ます。
でも、それはあくまでも「ある程度」であって、検査結果と実際に摂取したときの症状が一致しないことも多く、結局は実際に食べてみないと確実な判断をすることができません。
実際に食べてみて症状が出ない場合は良いのですが、赤くなったり吐くだけで無く咳が出て苦しくなったりぐったりするなど重い症状が出現した場合には適切に対応する必要があります。
開院当初、当院では積極的に経口食物負荷試験を行っていました。多いときは年間100人以上負荷試験を行っていました。
ただ、食物アレルギーの治療、予防は確実に進歩しています。赤ちゃんの皮膚をきれいに保つことと離乳食を遅らせない、適切に進めることなどにより食物アレルギーはかなり予防出来ることが分かってきました。
また、当院近辺のかかりつけの患者さんであれば適切な量を自宅でチャレンジしていただき症状が出た場合には早い段階でご来院いただく、などの対応が出来るため今では当院で半日かけて院内で経口食物負荷試験を行う必要がある方は激減しました。


その一方、どうしても経口食物負荷試験が必要である患者さんは今でも確実にいらっしゃいます。
当院ではお子さんが実際に食物を食べて反応が出るかどうかを確認するために、症状が出現してもすぐに対応出来る体制を整えた上、経口食物負荷試験を行っています。
2025年5月現在、当院が開院して9年間で既に300名以上の方に経口食物負荷試験を実施しています。
※ 外来日帰りで、経口食物負荷試験ができる医院は珍しいと、当院のある緑区だけでなく、横浜市北部(青葉区、都筑区、港北区)からも多くの患者さんにお越しいただいています。
大まかな負荷試験の流れ
経口食物負荷試験の最中は看護師や院長が、症状がでないかどうかを観察し、記録を残しています。症状が出た場合には軽い症状でも見つけて注意深く観察し、必要な時には適切な対応を取っています。
経口食物負荷試験の間、お子さんたちは部屋の中のおもちゃやDVDを見て時間を過ごすことが出来ます。
負荷試験の結果を踏まえて今後お子さんがどんな食べ物をどのくらいまで食べて良いかご相談させていただいています。
食物アレルギーの診断書
食物アレルギーにより、園や学校給食で、食品の制限や除去が必要なお子さんのために、生活管理指導表など「診断書」を発行しています。
アレルギー専門医の立場から、詳細な問診や適切な検査を行い、指示書を発行します。
診断書を希望される方は、なるべく提出期限の1週間以上前に当院にお越しください。
卵アレルギーがある子の予防接種
麻しん、麻しん・風しん混合 (MR)、インフルエンザなどのワクチンには、「鶏卵」の成分が含まれています。
とはいえ、ワクチンに含まれる卵の成分はごく微量のもので、卵アレルギーがあるお子さんでも、ほとんどの場合、問題なく接種することができます。接種の際は、より注意して経過観察いたします。心配な場合は、お気軽にご相談ください。
気管支ぜんそくの治療
気管支ぜんそくのあるお子さんが大人になっても困らないようにするために、気管支ぜんそくの治療で大切なのは、「発作を起こさないこと」です。
気管支ぜんそくの発作を繰り返したまま大人になってしまうと、大人になってもぜんそくがおさまらなくなり本人が将来苦しむことになります。
お子さんが大人になったときにぜんそくで困らないようにするのが小児気管支ぜんそく治療の目標です。
そのために、必要と判断した患者さんにはおうちでの吸入治療(フルタイド、パルミコートなど)や内服を、症状がないときも、毎日継続して行っていただきます。
症状がないのにお薬を使うの…?と心配されるかもしれませんが、敏感になっている気道に炎症を起こさないようにするために、発作予防として、吸入や内服を続けます。
梅雨前後や秋などの発作の起きやすいシーズンを通して発作が起きず、患者さんによっては検査を行い問題がないことを確認しながら出来れば薬を減らしていきます。
お薬自体は、妊婦さんにも処方される安心のお薬で、適切な量を長く使っても身体に悪い影響がほとんどないことが、証明されています。
小児ぜんそくの治療方針が気になる方も是非当院にお越しください。
アレルギー性鼻炎、花粉症
最近小さなお子さんの花粉症が増えています。
花粉症を疑う場合はまず原因をはっきりさせて(採血でデータを確認することが多いです)、花粉症=季節性アレルギー性鼻炎と診断すると同時進行で飲み薬や点鼻薬、点眼薬による本人に合った治療を行っています。
一方、小さなお子さんだと花粉症と思いきや実は風邪が長引いていたり副鼻腔炎があったりする方も多いので原因の見極めはとても重要です。
また、普段からずっと鼻水が止まらない、鼻が詰まる方はダニアレルギー=通年性アレルギー性鼻炎の方が多いです。意外と自分では症状に気づいていないお子さんや親御さんも沢山いらっしゃいます。
スギ花粉症、ダニアレルギーによるアレルギー性鼻炎に対して根本的な治療であり有効な方が多いのですが、定期的な通院が3〜5年必要になるので、無理なく数年間通えるクリニック・病院での治療をお勧めします。
最近は小児でもスギ・ダニとも十分に効果があり両方同時に治療しても問題がないことが分かってきたので、当院でも積極的に免疫療法を行うようになりました。
お子さんでも親御さんでも構いませんので、ご興味のある方は是非受診、御相談ください。
アレルギーに関する「保護者教室」受講のススメ
食物アレルギーの知識や舌下免疫療法について、一通り学びたいという保護者の方向けに、当院では、オンラインによる食物アレルギー教室や舌下免疫療法教室を年に数回開催しています。
食物アレルギー教室を受講していただき、食物アレルギーに関する基本的な知識を知っていただければ、親御さんも食物アレルギーに対して余計な不安を持たずに、普段の生活が送れるはずです。
受講を希望される方、興味のある方は「保護者教室」の案内もご覧ください。